僕は正しい。だから僕はこの人を殺す。

僕は正しい。僕は間違っていない。

あいつは今晩死ぬ。

自宅への近道になるこの階段は薄暗いから、足を踏み外して転落死したって不思議じゃない。
不思議じゃないんだ。大丈夫・・・・誰も疑ったりしないさ。
そうさ、大丈夫だ。誰も僕を裁いたりできないさ。例え神様でも。
だって・・・・あいつは、死ぬべき人間なんだから。

あいつに殴られたわき腹が、『あいつを殺せ』と痛みだす。体の奥底の痛みが怒りとなってとめどなく溢れ出す。どくどくと脈打つ鼓動が、痛みとなって僕の心臓と脳を痛めつける。
理性なんてもうとっくに擦り切れた。
ただもう、あいつに死んで欲しいだけだ。あいつを殺したい。
許さない。
僕を苦しめる人間をこの世から抹殺して何が悪い?
許されるはずだ・・・・たとえ僕の行為が世間にばれたとしても。でも、僕はそんなへまはしない。

死ね。
勝手に死ね。
そうしたら、僕はお前の葬式で泣いてやるよ。泣いたふりをしてやる。
だから、死ぬ為に早く帰って来い。
早く。
早く。

早く。
早くしてくれ。苦しいよ・・・・待つのは苦しい。

お願いだから、神様。
今日は僕の誕生日なんだから、今日ぐらい僕の願いを聞いてよ。早く父さんを、連れてきて。

僕はもう・・・・あいつのいる世界では生きていけないから。
だから・・・・早く。お願いだから。




「来た・・・・」

あいつが歩いてきた。一人だ。周りには誰もいない。
どうしよう。早く動かないと。足が震えて上手く歩けない。
父さんが階段を降りようとしている。
でも、大丈夫。焦るな。ほんの少し背中を押すだけでいいんだ。静かに父さんの背後に近づいて・・・・・


「・・・・・父さん」


どうして・・・・・僕は、この男に声を掛けている?
黙って背中を押せばいいのに。

父さんがゆっくりと振り返る。
僕の心を殺していく男の顔が、薄暗い闇の中に浮かび上がる。街灯に薄っすらと照らされた父さんの目が、大きく見開く。

「なんでお前がここに・・・・?」

あんたを殺す為だよ。
男の顔を見ると自然と手が動いた。黙ったまま男の胸を両手で軽く押していた。

「あっ・・・!」

父さんが背後に落ちていく。暗い階段をまるで人形のように転がり落ちていく。
僕はぼんやりと落ちていく様子を見ていた。暗闇が広がる階段の底で、ぐちゃりと鈍い音がした。

死んだ。
たぶん、あいつは死んだ。
なのに・・・・・望んだ結末のはずなのに、胸が苦しいのはどうして?息ができない。
立っていられなくて、僕はその場に座り込んでしまった。
不意に、地面から甘い香りがして僕はびくりと震えた。視線を彷徨わせると、薄暗い視界にケーキの白い箱が飛び込んできた。真っ白な箱は潰れて、生クリームとイチゴが地面に飛び散っていた。

今日は、僕の誕生日。

酷い男は、母さんの前ではいい父親の顔を崩さない。
誕生日ケーキはその象徴。

でも、それも今日で終わりだ。
僕は、後悔なんてしていない。大丈夫、後悔なんてしない。

「逃げないと・・・・早く。」

逃げよう。
大丈夫。僕は大丈夫。早く家に帰ろう。

僕は、狂ってなんていない。
僕は正しい。間違ってなんていない。

大丈夫。苦しいけど・・・・・大丈夫。


大丈夫。





*************


三月も中頃。
そろそろ、娘の新学期のクラス編成が気になるところ。幼稚園児の娘より、母親の私の方がなんとなく落ち着かず不安定な気分です。
しっかりしないとね

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