駄目兄 兄弟SS④

三日目の夜。
僕のベットの横の床に敷いた布団の中で、兄さんはぶつぶつと文句を言っていた。僕はベットにもぐりこんだまま黙って兄さんの愚痴を聞き流していた。

「・・・・・・」

「あかん、きつい。さすがに三日も連続で床で眠るのはきつい。腰は痛いし、なんか寒いし。くそぉーー桜子の温かい体が恋しい。ああ・・俺は不幸や。世界一の不幸者や。響のやつは弟の分際でふかふか暖かベットで眠りやがって。つうか・・・響の奴、可愛い顔して・・俺をこんな目にあわせるやなんてSやな。サドめ!!」

「・・・・彼方兄さん。人聞きの悪いこと言わないでよ。」

黙っているつもりだったけど、兄さんがあまりにもうるさく独り言を呟いているので僕はベットに潜りながらぼそりと呟いた。僕の反応に、兄さんが言葉を返す。
「なんや、起きてたんか?なあ・・響」
「なに?」
「床で寝るのもういやや」
「床じゃないだろ!!ちゃんと布団で寝てるじゃない、兄さんは」
「こんな使い古しの薄ーーい布団で安眠できると思うか?寝不足やっちゅうの。それに比べて、お前のベットのふわふわ感ときたら・・・・響ぃ。」
「なんだよ」
「俺も響のベットで寝たいぃ。一緒に寝よ」

突然兄さんはそう言うと、僕のベットの中に忍び込んできた。シングルベットが男二人の体重にぎしりと軋んだ。そんなこともお構いなしに、彼方兄さんは布団にもぐりこむと僕の体に身を寄せてきた。

「うおーーっ。響、温かいなぁ。」
「うわっ、やめっ!!」
兄さんは女を扱うように僕を抱きしめてきた。情けないことに、兄さんに抱きしめられて僕の体はすっぽりと胸の中に納まってしまう。

「気持ち悪いことするな、変態兄貴!!」
「おーー、響。ようやく俺の本性が判ったみたいやな。そうや、俺は変態や。変態の寂しがり屋のうさぎちゃんや。ああ・・あかん、寂しすぎて今にも死んでまいそうや。女に捨てられそうな可哀想なお兄ちゃんを慰めてくれーーー」

兄さんはふざけた事を言いながら僕をぎゅぎゅっと抱きしめてきた。
不意に、兄さんが男とも関係を持っていたことを思い出して冷や汗が出てきた。

・・・・・兄さんは、真正の変態かもしれない。
まさか・・・・まさか、弟と・・・・・。そんな馬鹿なこと考えてるなんてことはないと思うけど・・・・・

「ううっ」
僕は、とんでもない光景を想像してしまって思わず声を漏らしてしまった。そんな僕の動揺を気にすることもなく兄さんが口を開く。
「なんか・・懐かしいなあ。ちっちゃい頃は何時も同じ布団で寝てたっけ?憶えてるか、響」
「え・・ああ、うん。そうだったね」
「親父は、遊び人で浮気もんで全然家におらんかったし、母さんも水商売してたから・・・・夜は俺ら二人きりやったやん。あの狭いアパートで。」
僕は兄さんの言葉に誘われるように、昔の事を鮮やかに思い出していた。
古いアパートの二階。僕たち兄弟は、何時も二人で布団に潜り込んで母さんの帰りを待っていた。母さんは何時もふらふらになりながら朝方に帰ってきて、僕たちの顔を見ないままに寝ちゃうことも多かったっけ。今はもうあのアパートは取り壊されてないらしいけど。

「でも、響がおったおかげで・・・・親がおらん時間も全然寂しくなかったわ。暗闇も全然平気やった。お前のお陰ですっごい、いい思い出になってるわ・・・ありがとうな、響」
「えっ?」
兄さんが僕を見つめながら微笑む。
「んっ・・・響は昔と変わらず温かいなあ。なんか・・・・ほっとするわ。んん・・・・眠くなってきた」

兄さんはそう呟くと、本当にあっけないほど穏やかに眠りに付いてしまった。僕は兄さんの胸に収まったまま、呆れて兄さんの頬をつねってみた。
反応がない。

「嘘だろ・・・本当に寝ちゃったよ」

軽くいびきをかきはじめる迷惑な兄さんに、僕はもう脱力するしかなかった。でも、なんだか・・・兄さんの胸の中が妙に心地よくなってくる。
懐かしい温かさに包まれ、僕は自然と目を瞑っていた。
懐かしい香りがする。兄さんの香りだ。
僕はもう半分、夢の世界に入りながら昔のように兄さんの背中に腕を回して眠りに付いた。



(つづく)



**********

シングルベットで、穏やかに眠る兄弟。
エロはないけど・・・・私的には萌えます。
何気に「つづく」・・・でも、「おち」なんかきっとないから期待しないで読んでくださると嬉しいです(笑))


何時も元気玉ありがとうございます。。嬉しい>>


ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 3

ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

この記事へのトラックバック