駄目兄さんに萌えてみました。 兄弟SS①

「おー、響(ひびき)。久しぶり・・・ちゅうか、一ヶ月ぶりやな。それで・・まあ、あれや。金貸して」

玄関の扉を開くと、いつもの軽薄な笑顔を浮かべた兄さんが目の前に立っていた。開口一番の金の無心に、僕は怒りを通り越して呆れてしまった。
「兄さん、そういうことは僕への借金を返してから頼みなよ。じゃあね」
僕はそれだけ言うと、玄関の扉を閉めようとした。そのドアの隙間に無理やり兄さんが片足を突っ込んでくる。僕は意地になって扉を閉めにかかった。
がつん
「いてぇ!!馬鹿、こら!!響、本気で兄ちゃんを締め出すなっての。」
「うるさい。もう彼方(かなた)兄さんとは縁切り済みだから。縁切り寺にも詣でてるし、もう来なくていいから」
僕がそう言うと兄さんは、ぽかんとした顔をして口を開く。
「縁切り寺って、お前・・男女の仲やあるまいし。変な奴」
「兄さんに変なんて言われたくないよ。とにかく、もうお金は貸さないからね」
僕がそう言うと、兄さんはちょっと申し訳なさそうな顔をしながら呟いた。

「しゃーないなあ。そしたら、俺・・サラ金に手を出すしかないやん。お前の事勝手に連帯保証人にするけど、勘弁してな。ほんなら」

兄さんはあっさりそう言うと、扉から足を引っ込めた。僕は呆然として、次の瞬間には兄さんの腕を掴んでいた。

「彼方兄さん!!だ、駄目。それ最悪!!」
「なー、最悪のアイデアやろ?でも、俺いい加減な奴やからそんなことも平気でやっちゃうねんなぁ。」
兄さんがにやにや笑いながら僕の伸ばした腕を掴んできた。やられた・・・結局、僕は兄さんにいい様に扱われるわけだ。
僕は、顔を顰めながら口を開いた。
「いくら欲しいの?」
「おー、響。ありがとうな。やっぱり持つべきものは、兄弟や。・・・十万頂戴」
十万!!
「給料日前の十万がどれだけ大きいか・・・兄さん分かってる?」
「さあなあ。俺はお前と違って定職就いたことないしなぁ。でも、ええやん。お前、今の不景気に左右されへん市役所勤めやろ?地方公務員ってゆうても、そこそこ貰ってるやろ」
「貰ってないよ。とにかく十万は駄目」
僕の強い口調に、兄さんはしばらく考え込むとやがてにやりと笑って口を開いた。

「五万でええわ」

くそ・・五万も。
僕はうんざりしつつ口を開いた。
「また飲み代かパチンコ代に消えていくんだろうね」
僕が嫌味を言っても、兄さんはちょっと肩を竦めるだけだった。
「あぶく銭やな。俺もしょうもない人生歩んでるで。ああ、可愛そうな俺の人生」
「アホ兄。ああ・・もう、貸すよ。」
「真面目な弟を持てて俺は幸せや。なあ、頼みついでに・・・今日泊めて」
兄さんは言い終わらないうちに勝手に玄関に入って靴を脱ぎ始めた。僕は呆れたまま、そんな兄さんの後姿を見つめた。最近、彼方兄さんが亡くなった父さんとそっくりになってきている。整った顔立ちも、軽薄でいい加減な生き方もそっくりだ。
「兄さん、本当に父さんに似てきたね」
僕がそう言うと、兄さんは笑って背中を揺らせた。
「お前は、死んだ母さんそっくりになってきたな。可愛い顔で、真面目で・・・それやのに、しょうもない男に捕まって苦労して・・・そんな生き方しかできんかった女にそっくりな顔してるで。あー、お前も気をつけや。真面目なお前は、母さんに似てしょうもない人間に捕まりそうやからな」

「もうとっくに捕まってるよ。自覚ないなんて最悪だよ、兄さん」

僕の言葉に兄さんはにやりと笑っただけで、返事をしなかった。勝手にキッチンで冷蔵庫を漁っている兄さんを憎めない奴だと思っている僕は、本当に母さんに似ているのかもしれない。僕はため息を付きながら口を開いた。

「彼方兄さん、僕にもビール頂戴」



(おわり)



************

駄目兄さんに萌えてみました。
萌える。駄目兄、結構好きです。「寅さん」とかも好き。兄妹愛がそそる。。(笑)
響と彼方兄弟。二人の間にエッチな関係は今のところありません(笑))
響という名前はブログペットから取りました。私、登場人物の名前にほとんどこだわりがないので。この文中の響くんは真面目くんで鬼畜とは縁がなさそうですねぇ。
駄目兄SS、楽しんでいただけましたでしょうか??




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